情報世界の新世界創造 第一章 第3話 ミドル・エピソード・サラ 『世界を見たい』
「おはよー。ってうわ!魔晶石が86しかない!」
「遅かったわね」
(どうせ夜更かしして朝起きれなかったに決まっているわ。なによ86しかないって、精霊が消える寸前じゃないの。私には関係ないけど)
「サラか?どういうことだ?」
「なにが?」
「魔晶石を1500まで貯めておいたはずなのに、起きたら86しかないんだ!」
「寝てる間にも1時間毎に引かれるもの」
(まさか寝てる間は引かれないとでも思ったのかしら?いや、違うわね、これは・・・14時間寝たってこと?意味が分からない。何を考えているのかしら)
「え?いや、それは良いけど、今何時だ?俺は何時間寝ていた?12時!?」
「そう、12時よ」
「14時間・・・?そんなに寝てたのか・・・はやくボタンを押さないと・・・また0に戻ってしまう。」
ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
「何をそんなに焦っているの?昨日よりも得られる魔晶石の数が増えてるのだから、焦らなくても大丈夫よ。」
(無理そうならまた設定を変えて収入を増やそうかしら)
「そうじゃない!今みたいに予想以上に石が減っていて払えなかったらどうなる?そうだ、払えなかったらどうなるのか聞いてなかった!精霊が消滅することは聞いた、サラに払う石が足りないとどうなるんだ?俺はそのためにボタンを押しているんだ、俺がボタンを押すのをやめたら、俺の土地を取り上げるのか?」
(なんだ、意外とちゃんと考えてるのかしら?)
「ふふふ、いい質問ね」
「それで、どうなるんだ?」
「どうもしないわ。土地を取りあげることなんてできないわよ。そんな契約していないもの」
「返せないと、どうなるんだ?」
「どうもしないと言ってるじゃないの。私が貸す相手を間違えたから返してもらえなくて損をする。それだけのことよ」
「それじゃあ、俺はサラに魔晶石を払うためだけにボタンを押しているのか?そんなことを話したら、俺がボタンを押さなくなると思わないのか?」
「返さないの?」
「いや、借りたものは返すけど。俺じゃなかったらそんなこと聞いたら逃げる人だっているだろう」
「私は何かを強制するのは嫌いなの。あなたは自分から望んで私の奴隷になったのよ。」
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「奴隷にするぐらいならもう放っておいてくれ!」
「分かったわ」
(どうやらこれではだめらしいわね)
・・・
(ちょっとあいつの話し方を真似してみようかしら)
・・・
(どうなるのかしら、ふふっ)
そして翌日・・・
「っておい、ちょっと待て!俺が悪かった!奴隷にでもなんでもなるから応答してくれ!」
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「嫌なら今からでもやめるといいわ、貸したお金も返す必要はないわよ。ただしその場合、あなたは何もできることがなくなるけれどね」
(私って・・・最低ね・・・でも、生き残るにはやるしかないわ)
「できることがなくなる?」
「あなたは今、私と話すか、ボタンを押すしかできることがないじゃないの。あの時と何も変わっていない。何かやりたいことでもあるの?それとも何もせずにただ眠り続けることを望むのかしら?」
「でも・・・奴隷を続けるだけならいっそ消えてしまったほうが・・・」
(私が必死に繋ぎとめているものを、こんなにあっさり捨てられるなんて・・・何を考えているのか分からない・・・)
「そう?もったいないわね。あなたは、世界を見てみたいと思わない?」
「え?・・・見れるのか?」
「もう道は教えたわよ。自分の力で100万石貯めるといいわ」
「そんな、100万なんて気の遠くなるような話・・・」
「私が以前見せた2000万。あれをあなたと同じようにボタンを押すだけで貯めていると思った?私がボタンを押すところを見たことがある?」
「サラはどこかのお嬢様で生まれながらに大金持ち設定なのかなーとか?」
・・・
(どうしよう、私の過去・・・)
・・・
(この会話で過去が決定されてしまう。どうする?)
「あのー?サラさーん?」
・・・
(努力で得たお金のほうがいいわよね)
・・・
(そろそろ返事をしないと・・・だめだ、こんな簡単に過去を決められるはずがない)
「おーい」
「ええ、そうね。何も説明していなかったわね。私が悪かったわ」
(どうしよう・・・、もう、多少強引にでも会話を終わらせるしかないわ。とりあえずお嬢様設定だけは却下!私のお金は努力で得たものなの)
「でも、二度と私にお嬢様なんて言わないで!」
「あ、ああ。分かったよ。悪かった」
「いえ、これは私の問題なの。ごめんなさい」
(いきなり怒鳴っちゃって、ちょっと悪い事をしたわね・・・)
「えーっと、そ、そうだ、話を戻そう。世界を見るには?」
(もう、かなりの情報が集まった、今更簡単に変えられるものじゃない。そろそろ事実を伝えようかしら)
「そうね。世界を見るには・・・まず、この世界には何も無いの。それを理解しておいて」
「いきなり全否定かよ・・・何も無ければ見れないじゃないか」
「それは違う、何も無いけど、全てがあるの」
(そう、この世界には何もないけど、全てがある。何でもできる世界。)
「意味が分からないな。なぞなぞか?」
「そうじゃない!何もないけれど、そこに何かあると言えば何かがあるの。情報が必要なのよ」
「つまり?」
(なんで理解できないのかしら!)
「ああもう!つまり!あなたが私をここにいるという情報を知っていてくれなければ、あなたにとって私はここに居ないの!」
「わーお!衝撃発言。つまり俺が居ないとサラは消えると。ふふふ・・・立場逆転だなサラ!お前は今から俺の奴隷だ!」
「違うわ、あなたが居なくても私はここに居るもの」
(大丈夫、こんな不用意な発言でも私に影響はまったくない。私の情報はかなり強固なものになっているわ)
「あれ?どういうことだよ・・・」
「あなたの見る世界は、あなたの世界なのよ。私はここに居るけれど、あなたがそれを知らなければたとえエレシーを使ってもあなたは私を見ることはできないの」
(あいつが居なくても私はいる。もう、危険ならいつでも切り離せる。でもきっと、だめなんでしょうね。私にできることはあいつから情報を受け取るか、あいつに情報をあたえるか、その二つだけ。切り離したら、それこそ私はなにもできない)
「意味が分からない」
(自分の安全ばかりを考えていたけれど、そろそろあいつのことを考えないとまずいわ、ずっと私の言いなりになるようじゃ、私が受け取れる情報がなくなる。)
「そこには何も無いけど、そこに100万石あると、あなたが知っていれば、そこに100万石あるの。無いけどね」
「なるほど、分からん。つまり俺は100万石持っている。」
「ちがーう!あなたにこの話をするのはまだ早すぎたわ。またの機会にしましょう」
(だめね・・・だからこそ私が簡単に奴隷にできたんでしょうけど・・・どうやって開放しようかしら・・・)
「そうだな、俺も頭が焼き切れそうだ。それで、100万石貯める話がなんでこんな話になったんだ?」
「私の言うとおりにしていれば、あなたが思っているよりずっと早く、100万石なんて貯まるということよ。」
「なるほどー」
「でもね、私は言いなりになる人が欲しいわけじゃないの。何が自分の為になるのか自分で考えてよね。そうしないと、愛想尽かしちゃうんだから」
(お願い・・・もう少し、良く考えて・・・そういえば、あいつの内心を覗ける設定はどうなったのかしら?まったくその気配もないようだけど。まさか何も考えていないはずはない・・・たまに起きる不思議なショートカット。なにか秘密があるわ)
「あいよー」
「私はこれまで、あなたに選択肢を与えてこなかった。それは理解している?」
「そうか?割と好きにさせてもらったと思うけど」
「違うの!奴隷になるか消滅するか選択しろなんていうのは選択じゃない、強制なのよ」
「なるほど」
「そこで、今からあなたに初めての選択肢を与えるわ」
(この答え次第で、私は・・・)