情報世界の新世界創造 第一章 第1話 『世界の始まり』

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何もない。

光も。

身体の感覚も。


「ここは情報世界『インフォーマ・ポートフォリオ』。情報が実体を持つ世界。全ては、意のままに。チュートリアルは以上」


突然、声が聞こえた。

意味が分からない。


「始めまして、私はサラ、あなたのお名前は?」


俺は・・・俺は誰だ?

何も思い出せない。

自分が誰なのか、ここはどこなのか


「あなたもしかして、記憶がないの?・・・言葉は分かる?話せる?」


言葉は分かる。

話すとは、どうやるのだろう?体の感覚が無いのだ、声が出せない。


「かなり重症みたいね・・・いいわ、話さなくても意思疎通はできてるから」


どうやら伝わっているらしい。


「記憶がないみたいだから説明してあげるわ、一度しか言わないからよく聞いてね。ここは情報世界『インフォーマ・ポートフォリオ』よ。情報が実体を持つ世界。話すときには「」をつけるの、やってみて」


意味が分からない、1度しか言わないと言いながら2回目だ。「」をつけるとはどういう事だろう?サラは頭が残念な子だったのか。


「ちょっと!頭が残念な子ってなによ!」


「こうだろうか?」


「そう、それよ!やればできるじゃない。それよりも頭が残念な子ってなによ!」


「でも、話さなくても伝わってるんじゃないのか?何のために話すんだ?」


「あなた、もしかして私としか話さないつもり?いつまでも付き合って貰えるなんて思わない事ね。記憶もない厄介者の相手なんてごめんだわ。それよりも頭が残念な子ってなによ!」

 


そんなこと言いながら話し相手になっていろいろ教えてくれるなんてサラはやさしいなー


「な!そ、そんなことは・・・ちゃんと話さないと伝わらないんだからね!」


ちゃんと伝わってるくせに、照れたところも可愛いな。


「もう知らない!」


「ご、ごめん。分からないことがありすぎて状況が整理できないんだ、しばらく付き合ってくれないか?」


・・・

・・・

返事がない、ただの屍のようだ


「誰が屍なのよ!」


「ごめん、つい」


「・・・いいわ、付き合ってあげる、ただしあなたは私の奴隷よ。それで、何が聞きたいの?」


「ちょ、ちょっと待て、奴隷ってなんだ!?」


「気にしなくていいわ、それで、何が聞きたいの?」


「いや気にするよ!奴隷にするぐらいならもう放っておいてくれ!」


「分かったわ」


・・・

・・・

そして翌日・・・


「っておい、ちょっと待て!俺が悪かった!奴隷にでもなんでもなるから応答してくれ!」


「分かればいいのよ」


「はあ・・・」


「それで、何が聞きたいの?ああ、そうだ、忘れていたわ。その前にこのボタンを押してみて」


「ボタン?」


「ええ、早く」


「どうやって?」


「ボタンを押そうと思えば押せるのよ」


「お?なんかボタンを押した感覚があるな。どういう仕組みなんだ?」


「気にしなくていいわ、これがこの世界の本質よ。徐々に慣れていけばいいの」


「いったいなんなんだ・・・」


「それで、何が聞きたいの?」


「え?ああ、そうだった・・・まず、何も見えないんだが、というか目があるのかすら分からないんだが・・・」


「目ってなに?」


「は?」


もしかしてこの子、俺以上にやばい状況なんじゃ・・・


「失礼な!私があなたの言語に合わせてあげてるの、それとも私の言語で話してみる?情報言語『オード』よ。ΗΔΦΞΨζ」


「ごめんなさい、戻してください。」


「ここでは物を見るのに目なんて必要ない。私にはこの世界で物を見るための感覚器官があるから見えているわ。この世界で暮らすほとんどの人は生まれながらに持っているの。でも、あなたには無いようね。あなたがこの世界で物を見ようとすると「エレシー」を使う必要があるわね。私は良いけど他の人に「目」なんて言っても誰も理解できないから気をつけなさい」


「いきなり盲目だと!?難易度高すぎるだろ俺の人生ーーー!!でもエレシーってのがあればいいんだな?それはここにあるのか?」


「とても高価なものだから暫くは手に入らないでしょうね」


「そうなのか・・・ちなみにおいくら・・・?」


「魔晶石100万個よ。と言ってもあなたには分からないでしょうから、魔晶石は1つ1円の価値があるものと思っておけばいいわ。つまり100万円ね。」


「100万円だとーーーー!?」


「そんなことよりもあなた住所はあるの?物を見ることの心配をする前に今にも消えそうなこの状況をどうにかしたほうが良くないかしら?」


「え?俺って消えそうなのか?どこまで危機的状況なんだ!どうすれば消えずに済む!?」


「ここでは『ハイドミナント』通称HD世界にアドレス、つまり住所を持ってないとすぐに消えてしまうのよ、あなたが今いる場所はメモリ世界よ。メモリ世界は誰もが使える代わりに、他者の存在によって上書きされてしまう危険があるのの。今のあなたじゃスライムにも勝てないわよ。いつ消えてもおかしくない。むしろ今まで良く消えなかったわね。」


「ちょっと待ってくれ、意味が分からない。打開策はないのか?頼む、助けて!」


「いいわよ」


「え?いいの?」


「奴隷を失うのは私も惜しいもの。」


そういうことか・・・っというかあれは本気だったのか・・・


「この世界の土地は一番安い物なら1万石あれば手に入るわ。情報世界ではほとんど手数料だけで良いの」


「そうなのか、助かるよ。でも俺無一文なんじゃないか?」


「だから私が助けてあげるって言ってるの!感謝しなさい」


「ああ・・・ありがとうサラ様」


「分かればいいのよ、それじゃあこの1万石を貸してあげる、利子は1時間1%でいいわ」


「おいちょっとまて!1時間1%って高すぎだろ!闇金もびっくりの暴利だよ」


「そう、それなら消えるのをおとなしく待つといいわ」


「俺が悪かったです助けてくださいサラ様」


「分かればいいのよ」


ちくしょう・・・


「じゃあ早速、これを受け取って」


「どうやって?」


「もう、私がやるからいいわよ」


「お?なんかの数字が増えた感覚が・・・1万個もの石を持てるのか疑問だったがこういうことか」


「そう、魔晶石はいくつ持っているか数字だけで表せるのよ。ちなみにその隣の【-100】が時間当たりの生産量よ。この世界では複利が禁止されているから勝手に増えたり減ったりすることはないわ。そしてこっちが私の持っている魔晶石よ」


「サラって2000万も持ってんの!?ってか人のまで分かるのかよ!この世界のセキュリティはどうなってんだ」


「大丈夫、見せてあげただけよ。あなたも早く隠しなさい。」


「趣味が悪いな・・・」


「な!あなたが見せびらかしてたから警告してあげたのよ!」


「そうか、ありがとう。ところで、2000万もあるならエレシーが買えるんじゃないのか?」


「もう、甘えないの!誰があったばかりの他人に100万も貸すと思うの!?」


「だよなぁ・・・でも何も見えないって辛すぎて、俺も限界なんだ。ちょっとした戯言は許してくれ」


「いいわ、とにかく急いで土地を買いに行くわよ、このままじゃ私の1万石が消えちゃうわ」


俺よりも石の心配か・・・


「お金の単位は石なのか?」


「そうよ、ところで、そろそろ内心をさらけ出すのは辞めなさい。」


「え?サラが勝手に俺の思考を覗いてたんじゃないのか!?」


「そんなはずないでしょうが、()をつけると他人からは見えないのよ」


(サラのバーカ)


「はあ・・・子供ね」


「おい!聞こえてるじゃねーか」


「聞いてないわよ、どうせ変な事考えてたんでしょ?」


「ぐぬぬ・・・」


「ぐぬぬ・・・なんて言う人初めて見たわ。それから、私はやろうと思えばあなたの思ったことも覗けるから変なことは考えないように」


「おい!」


「土地を買いに行くわよ」


「ああ・・・そうだな」


「このボタンを押して土地を買うのよ」


「身体の感覚もないのにボタンを押すとは?あれ、できた。ポチっと」


・・・

・・・


「おお?土地が自分の物になった感覚がした!!これどんな仕組みなんだ?」


「説明するのは難しいから自分で感覚を掴んでちょうだい、割と簡単に分かるはずよ。そしてここはもうあなたの土地。私もあなたの許可がないと入れないわ」


「許可?」


「追い出したければ出て行けと考えるだけで追い出せるわよ。でも私で試さないでよね、あの感覚は嫌いなの」


「そうか、じゃあ次は何をすれば?」


「このボタンを押してみて」


「はいよ、ポチっと・・・」


「魔晶石を見て、1増えたでしょう?」


「おお!?ボタンを押すだけで魔晶石が1増えたぞ!」


「そう、このボタンを押すと魔晶石が1増えるの、10秒に1回しか意味がないわよ。さあ、これで魔晶石を集めて私の1万石を返しなさい」


「10秒に1回、充分だ!1時間に1%なんて借りたままでいられるか!すぐに返してやる」


ポチポチポチポチポチ・・・


ポチポチポチポチポチ・・・


20分後・・・


「よし100回!」


「おめでとう、残り借金1万石よ、頑張ってね」


「は?・・・そうか・・・もう、借りてから1時間たってたのか・・・ってちょっとまて!どんなに早く押しても1時間に360石しか稼げないんだが!1時間に利子で100石取るとか、お前どんだけ俺からむしり取るつもりだよ!」


「命の恩人に向かって酷い言いぐさね、いいわ、特別に使うと魔晶石が1カ月間2倍獲得できるようになる魔晶石の巻物を売ってあげるわ、通常1000円のところが今私から買えば500円よ!魔晶石じゃなくて円だから気を付けてね」


「魔晶石じゃなくて円ってどういうことだ?俺は魔晶石しか持ってないが。魔晶石も借金しか持ってないが。」


「あなたには関係ないことよ。」


「え?」


「知らないほうがいいわ。良かったわね、買ってくれたわよ。とにかく、これで一カ月間は魔晶石が2倍手に入るの。私は少し別の用事があるから出かけるわ、2時間後ぐらいにまた来るわ、それまでに1000石貯めておけば良いことがあるわ、頑張ってね」


「あいよ!よし、やるか!」


ポチポチポチポチポチ・・・


ポチポチポチポチポチ・・・

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